名曲とは
【フラメンコギターの歴史】
- フラメンコギターの歴史はそんなに古いものではありません。ギター独奏に限れば100年くらいでしょうか。
- 今なお至高のフラメンコギタリストと讃えられるフラメンコギターの独奏の創始者と呼ばれるラモン・モントーヤが生まれたのが記録が確かであれば1880年ということですので彼が20~30歳代で昔のレコードに残されている名曲を完成させたとしても90年位のものです。
【歴史に残る名人達】
- ラモン・モントーヤ以降、フラメンコ音楽の本場スペインからはきら星の如くの名手達が生まれていますが代表的な名前を挙げれば ニーニョ・リカルド、サビーカス、セラニート、パコ・デ・ルシア、ビセンテ・アミーゴ、トマティート、この辺りが超のつく名手でしょう。
- その他にも録音は残っていませんがマノーロ・デ・ウェルバ等も忘れてはならない人です。レコード(CD)等で聞くことのできるものではメルチョール・デ・マルチェーナ、ペペ、マルティネス、エステバン・デ・サンルーカル、 ファン・セラーノ、マヌエル・カーノ、マノーロ・サンルーカル等がいます。
【名曲】
- フラメンコギタリスト達はほとんどの人たちは自分で曲を創り演奏しています。昔も今もそうですがどこかで聴いたメロディーや他のジャンルの音楽等からインスピレーションを得て曲を創ります。
- この自作の曲が良い曲(名曲)であるかどうかが技術(演奏テクニック)とともにそのギタリストの名声を高める大きな要因です。
- この名曲はなかなかできるものではありません。また、聞いて良い曲、弾いて良い曲と二通りありように思われますし、ギターを弾く人と弾かない人とでも曲の感じ方は違うように思います。
【名人達の作風】
- 現在50代のセラニートやパコ・デ・ルシアも若い頃の作品にはニーニョ・リカルドに相当の影響を受けていますし、サビーカスのメロディも参考にしています。
- 昔(30年ほど前)はセラニートもパコ・デ・ルシアも同じ位の人気でした。その後はパコ・デ・ルシアが世界中で認められたのに対し、セラニートは忘れ去られたようでしたが、これはセラニートの技術がパコ・デ・ルシアより劣っているとかではなく、うまく流れに乗れたのがパコ・デ・ルシアということだと思います。ただ一ついえることは創る音楽の違いでしょうか。
- パコ・デ・ルシアの音楽はギターを弾く、弾かないに関わらず誰にでも理解できるものですが、セラニートの曲はギターを弾く人それもセラニートの技術に近いところまで弾ける人でないとその良さを十分に感じとることができないようなところがあります。
- セラニートの曲は今風の曲作りが皆に飽きられた時にまた注目される芸術だと思います。
これは昔のサビーカスとリカルドと似たようなところがあり、サビーカスはコンサートギタリストとして世界中で活躍していましたが、リカルドは本場スペインで本物のフラメンコ音楽をじっと守っていたような気がします。
【レッスンする曲】
- 現在、私の教室ではサビーカスより、リカルドの曲のレッスンを受ける人が大変多く、サビーカスの曲ではAマイナーとEマイナーのファルーカを必ず教えますがその他は何曲かのアレグリーアスとブレリアスをレッスンするくらいです。
- リカルドの曲は15曲ほど。
- セラニート、パコ・デ・ルシアも15曲ずつくらいです。
- ビセンテ・アミーゴはデビューアルバム「DEMI CORAZON AL AIRE 我が心を風に解き放てば」よりグラナディーナス、タランタス、ソレアーレス、ブレリアス、アレグリーアスの5曲です。
- その他ではトマティートのブレリアス(ラ・チャンカ)、ソレアーレス、ミネラ等です。
【難曲への挑戦】
- それぞれのギタリストの曲の中には技術的には比較的簡単なものから、ものすごく難しいものまであります。
- 特にセラニートのグワヒーラス(デビュー版ではなくスペインで録音された5枚目位のレコードのもの)、 パコ・デ・ルシアではラ・バローサの副題の付いたアレグリーアス(SIROCO/熱風、ライブ版)、ビセンテ・アミーゴのアレグリーアス、 そしてトマティートのブレリアス(Rosas del AmorのLa Chanca)は難曲中の難曲です。
- 私のレッスンは生徒と一緒に弾いて稽古しますので、私自身もこのあたりの曲を弾くのは大変です。
【名手達の名曲】
- 先ほど述べました、超名人6名の後世に残る名曲を紹介しましょう。
- サビーカスはファルーカが非常に完成しています。これは現代のギタリストにもまだ超えられないところがあります。その他アレグリーアスやブレリアスにも名曲と呼ばれるにふさわしいものが数曲あります。
- ニーニョ・リカルドは多くの名曲を残しましたが、いずれのメロディもすべて美しく、時に複雑で難しく、また豊かな情感に裏付けられています。特にシギリージャやサパテアードはここで紹介したパコ等現代の名手達にも超えられない名曲といえます。
- セラニートではソレアーレスやグラナディーナス等音づくりは地味ですが誰にも近づけない名人の世界があります。
- パコ・デ・ルシアではソロのデビュー版からパティーニョの想い出(アレグリーアス)、2枚目のレコードのエル・テンプル(ブレリアス)をはじめ、最近のラ・バローサ(アレグリーアス)等速いスケール(ピカード)の使い方も絶妙な名曲です。
- ビセンテ・アミーゴのデビューアルバムは名曲が多く、前述のとおりソロ5曲が素晴らしい名曲といえましょう。音の使い方も今までの音楽とは少し趣が異なり魅力あるものです。その後、何枚かCDが発売されていますがこのデビュー版の作品が一番完成されていると思います。デビュー版がリリースされ10年前後経過し、これに続くCDも発売されていますが、これらの曲に匹敵する、あるいはこれらの曲を超える名曲を聴きたいものです。
- トマティートではソレアーレスやブレリアスが最高の名曲だと思います。特にブレリアスは難曲中の難曲ですが、練習していて楽しい曲です。
- その他ではラモン・モントーヤのロンデーニャ、ぺぺ・マルティネスの小品カンパニジェロス、メルチョール・デ・マルチェーナのブレリアス、ファン・セラーノのファルーカ等が名曲の部類に入る曲だと思います。
【発表会】
- 発表会は毎年11月初めの日曜日に開催しています。日頃の練習の成果を披露する場であるとともに、他の門下生の演奏を聴き、新たな曲にチャレンジしたくなる時でもあります。
- 2011年も11月6日(日)に第35回門下生研究発表会をTOKYO FM HALLで開催いたします。開演は16時からです。出演者は岡弘祠門下生の上級者40名前後で、名人達の名曲のほとんどが演奏されます。